これぞ、浮世絵な定番作品

いざ浮世絵を飾ろうと思っても、「沢山ありすぎてどれを選んで良いか悩みます」というお声をいただきます。 そこで、はじめての方にもオススメの浮世絵をピックアップしてみました。 迷ったら、まずはここからはじめてみてはいかがでしょう。

誰もが一度は目にしたことがある、キングオブ浮世絵

かながわおきなみうら

神奈川沖浪裏

葛飾北斎 / 富嶽三十六景

葛飾北斎の代表作のひとつで、世界的にも有名な作品です。
現在の神奈川県横浜の本牧沖から富士を眺めた構図は、北斎が長年追求してきた「波」をテーマにした作品の中でも最もダイナミックで最高傑作の呼び声高い作品です。
2020年から発行されている新パスポートにも採用され、さらには2024年に発行が予定されている新紙幣1000円札の裏面にもこの作品が採用されることが決まっている日本を代表するアートではないでしょうか。
海外の有名美術館にも所蔵されており、世界的にとてもファンの多い作品ですので、日本人の方はもちろん海外の方が多くお見えになるシーンでは特に目を引くアイテムです。

「赤富士」の愛称で親しまれる北斎の最高傑作

がいふうかいせい

凱風快晴

葛飾北斎 / 富嶽三十六景

日本を象徴する「富士山」を、日本を代表するアーティスト「葛飾北斎」が描いた作品で、「赤富士(あかふじ)」の愛称でも親しまれています。
富士山を描いた作品では最も有名な作品といえ、鮮やかな赤富士は日本人の心象風景を表す北斎の最高傑作のひとつです。
「富士山」に「赤い色」と縁起が良いイメージを抱く方が多く、験担ぎ・縁起物としてビジネスシーンでは特に人気の作品です。

ポスト印象派画家・ゴッホが油彩で模写した浮世絵

かめいどうめやしき

亀戸梅屋舗

歌川広重 / 名所江戸百景

現代ではアニメや漫画、ゲームのサブカルチャーが世界的に人気の日本のコンテンツですが、世界で最初に影響を与えた日本のコンテンツとして「浮世絵」でした。
19世紀後半、ヨーロッパでジャポニズムと呼ばれる日本ブームが起き、世界中のアーティストたちに大きなインパクトを与えました。その中心にあったコンテンツが「浮世絵」です。

当時のベストセラーシリーズ「名所江戸百景」からの1枚

おおはしあたけのゆうだち

大はしあたけの夕立

歌川広重 / 名所江戸百景

こちらも、フィンセント・ファン・ゴッホが油彩によって模写した浮世絵です。
北斎のライバルといわれていた歌川広重による晩年の大作であり、当時のベストセラーとなったシリーズ「名所江戸百景」からの1枚です。
構図、色調、描写どれをとっても完璧です。にわかに降り出した夕立の様が、実に見事に描かれています。

ゴッホの名作「夜のカフェテラス」に影響を与えた作品

さるわかまちよるのけい

猿わか町夜の景

歌川広重 / 名所江戸百景

本作品、特に町の人々の月影の描写は、ゴッホの名作「夜のカフェテラス」に影響を与えたとされています。
現在の東京都台東区浅草六丁目あたりを描いたものですが、芝居小屋が奥まで続く様子を遠近法によって見事に描かれています。夜空に浮かぶ満月にはうっすらと雲がかかっている様子は、「あてなぼかし」の技法が使われていて、全体的な色味も含めとてもクールな作品で、モダンな空間にもマッチするのではないでしょうか。

フランスのガラス工芸家・ガレに影響を与えた作品

ききょうにとんぼ

桔梗に蜻蛉

葛飾北斎 / 北斎花鳥画集

ガラス工芸家や陶芸家などとして知られるフランスの芸術家、エミール・ガレにも影響を与えた作品といわれています。
戦国武将・前田利家の兜のモチーフや本多忠勝の槍(蜻蛉切)からも見えてくるように、日本では古来よりトンボは縁起の良い虫「勝虫」として貴ばれています。
最近では池井戸潤さんの小説「陸王」に登場する主人公の会社「こはぜ屋」のロゴがトンボでしたし、不退転の精神でビジネスにも勝つという意味にもつながりますよね。

印象派画家の代表格・モネが愛し影響を受けた浮世絵

かめいどてんじんけいだい

亀戸天神境内

歌川広重 / 名所江戸百景

印象派を代表するフランスの画家クロード・モネに影響を与えたといわれている浮世絵のひとつです。
モネが晩年を過ごしたジヴェルニーの家に名作「睡蓮」の舞台としても有名な庭をつくっており、その庭の池に架けた日本風な橋のモデルとなったといわれているのがこの作品です。
本作品の場所は現在の東京都江東区亀戸、亀戸天神の境内を描いたものです。

モネの名作「ポプラ並木」に影響を与えた作品

とうかいどうほどがや

東海道程ケ谷

葛飾北斎 / 富嶽三十六景

フランスの印象派のクロード・モネの作品「ポプラ並木」に大きな影響を与えた作品としても有名です。
街道の松の描写に注目しながら、見比べてみるととても面白いです。
また「松」は日本で古来より神の宿る神聖な木とされています。語源の由来として「神を待つ」「祀る」「祭り」などの意味も考えられており、ビジネス的な親和性のある作品ではないでしょうか。

謎に包まれた浮世絵師・東洲斎写楽の代表作品

さんせいおおたにおにじのえどべえ

三世大谷鬼次の江戸兵衛

東洲斎写楽

わずか10か月の期間に、140点ほどの浮世絵を描き、忽然と姿を消した「謎の絵師」東洲斎写楽の代表作品です。
寛政6年(1794年)に上演された演目「恋女房染分手綱」の中で三世大谷鬼次が演じた「江戸兵衛」がリアルに描かれています。
作品の背景には、鉱物である雲母(うんも)の粉末と、接着剤の役割をする膠(にかわ)を混ぜ合わせた「雲母(キラ)」といわれるものを和紙の上に載せています。
ネットでは伝わりにくいのですが、間近で見るとそのキラキラとした輝く様子を見ることが出来ます。

江戸の人気歌舞伎役者・5代目市川団十郎を描いた作品

いちかわだんじゅうろう しばらく

市川団十郎 暫

歌川国政

本作品は、市川宗家のお家芸として選定した18番の歌舞伎「歌舞伎十八番」の中でも有名な演目「暫(しばらく)」の市川団十郎を描いた役者絵です。
市川鰕蔵(えびぞう)の顔を真横から描いた斬新な構図は迫力があり、線と色がはっきりとしたデザイン性の高く人気の作品です。
市川団十郎の家紋「三桝」が大きく描かれており、顔には「勇気・正義・強さ」をもった役に使われるという赤い隈取り(くまどり)がされています。目の中はオリジナル同様に職人が筆で色を入れている、大変手の込んだ作品として仕上がっています。
「東京2020オリンピック競技大会」の開会式で十一代目 市川 海老蔵が演じていたのを思い出す方もいるのではないでしょうか。

当代随一の名優と謳われた、市川鰕蔵を描いた作品

いちかわえびぞうのたけむらさだのしん

市川鰕蔵の竹村定之進

東洲斎写楽

こちらも現在でも正体の分かっていない「謎の絵師」東洲斎写楽の作品です。
寛政6年(1794年)に上演された演目「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)」の中で市川鰕蔵が演じた「竹村定之進」がリアルに描かれています。
大きく描かれていた鮮やかなオレンジの着物は、モダンな空間でも抜群に目を引きます。
ちなみに写楽は、ルーベンスと並ぶ三大肖像画家の一人として紹介されるほど世界的に評価の高いアーティストです。